HISTORY

1919

BIG YANKの誕生

1897年に創業したリライアンス マニュファクチュアリング カンパニーにより、1919年、ワークウェアブランド〈BIG YANK〉が誕生。創設者ミルトン・F・グッドマンのもと、コットン素材のチンストラップを備えた実用的なシャツが登場。当時、信頼のあるファブリックサプライヤーの生地を採用するなど、素材選びにも確かな審美眼と基準が反映されていた。巻き縫い、3本針縫製、通気孔など、機能と品質を両立した“着る道具”としての原型がこの時代に形成された。

1919年|BIG YANKの誕生
1920s

左右非対称が生んだ機能美

1929年、リライアンス社は左右非対称ポケット構造の特許を出願。左胸に袋状のシガレットポケット、右胸にペン挿し付きの縦長ポケットを備えた“ガチャポケ”は、用途の異なる収納を合理的に設計した実用的ディテールとして注目された。1933年のシカゴ万博記念シャツにも採用され、〈BIG YANK〉のワークシャツが高い機能性とデザイン性を備えていることを広く印象づけた。視覚的な個性と明確な用途が融合したこの設計は、ブランドの革新性を物語る代表的意匠のひとつとなっていく。

1920-30年代|左右非対称が生んだ機能美
1940s

山型ポケット、意匠としての完成

〈BIG YANK〉を象徴する“ヤマポケ”は、五角形の個性的なフォルムと、片手での開閉を想定した尖ったポケットが特徴。1942年に出願、1944年に商標登録されたこのポケットは、デザインの独自性と使用時の快適性を両立した、完成された構造となった。視認性・操作性・耐久性を兼ね備えた“ヤマポケ”は、他のワークシャツにはない存在感を放ち、今なお忠実に再現され続けている。

1940年代|山型ポケット、意匠としての完成
1940s

全米で広がる定番ワークウェアへ

第二次世界大戦下、米海軍への納入を行うなど、高い信頼性と実績を背景に全米のブルーカラー層へと浸透。シャンブレーシャツやユーティリティジャケットといったモデルは、現場での使用に耐える設計で、日常着としても多くの人々に親しまれた。戦時下においても変わらぬ品質を保ち続けたことが評価され、〈BIG YANK〉はこの時代にアメリカを代表するワークウェアブランドとしての地位を確固たるものとした。

1940年代|全米で広がる定番ワークウェアへ
1980s

ブランドの一時終息

時代の移り変わりや生産体制の変化により、1980年代に入り徐々に市場から姿を消すこととなる。ブランド展開は終了したが、往年の製品はヴィンテージ市場で高く評価され、特に“ガチャポケ”や“ヤマポケ”のモデルは希少価値のあるアイテムとして扱われるようになる。そのデザイン思想と職人的技術は、静かに次世代へと受け継がれていった。

1980年代|ブランドの一時終息
2012

実名によるブランドの再評価と再構築

2012年、アーカイヴニスト寺本欣児により〈BIG YANK〉が実名で再構築される。彼が所有する膨大な資料をもとに、当時の縫製技法や素材、ネームタグ、ディテールまでを徹底再現。単なる復刻ではなく、現代の視点から再構築され、多くのファンやワークウェア愛好者へ支持されるブランドへと進化。新たなフェーズの幕が開かれた。

2012年|実名によるブランドの再評価と再構築
2025

現在、そして未来へ

〈BIG YANK〉は現在も“リアルな機能美”を核に、ワークウェアの本質を問い直しながら新たな提案を続けている。“ヤマポケ”や“ガチャポケ”といった意匠を受け継ぎながら、現代のライフスタイルに適応する素材や設計で再構築。“100年使いたい一着”という思想のもと、時代を超えて愛されるタフで誠実な衣服を目指し、次の100年へと歩みを進めている。

2025年|現在、そして未来へ